桂林の九馬画山から中国の石文化を思う

2014年09月17日中国観光ガイド

桂林観光に来るならば、船で有名な漓江下りのコースをすると必ず「九馬画山」と言われたポイントが見えます。その時、ガイドさんは必ず興味津々に観光客のあなたに「九馬画山」についての説明をしてくれます。見れば船の前にほかの山と隣接した一枚の切り崩した岩石がほぼ90度の角度で聳えている山があります。この岩石の表面に白黒の模様が交錯しているのが分かります。ざっと見ればこれはただの雨に濡れて白黒に変色したものではなかろうか。ところがガイドさんの説明に耳を傾けると全く話が違います。「皆さん、よく想像してみてください。白色の模様を馬に想像すればよろしいですよ。よく数えてみれば九匹が見えます」と言ってくれます。「九」という数字は中国では縁起のいい数字であるうえ、「馬」という家畜も農耕や運搬に使えるばかりではなく、「馬到成功」(馬が至れば成功を収める)といったようなプラスの意味として理解される場合が多いようです。

中国では昔から石に対する愛着があり、古典小説の《水滸伝》にも皇帝様の誕生日のお祝いに地方の役人が地元の造形の珍しい石を貢物にして収めるのが描写されています。また明、清の時代に地方に住居を構えた役人や有名人などが石で築いた庭園や枯山水がその時代の麗しい建築文化と受け止められています。石というモノは傷みにくい物と思われるよりもむしろ中国人の美意識や伝統文化を伝承したキャリアだと言ったほうが適当だと思います。現在豊かになった中国人は精神的なものを求める中、昔のような風流な精神生活に興味を惹かれるようになり、中国人らしい文化や感情を込めるとされた石の販売、鑑賞のブームが復活しています。特に形や造形などが珍しい石に中国人の独特な発想による文化の理解や面影も見いだせると考えられています。この点で日本の神道教と違っています。神道教では世の中にあるすべての石に神様がみんな宿ると考え、神社に祭られるのとは根本出来に違うわけです。

前述の巨大な岩石に描いた「画山」は中国人に無尽蔵とも言える想像の源泉を与えてくれました。そして「九匹の馬」にも想像できることも中国人の観光客は言うもでもなく、はるばる世界各地から訪れた人々にどれだけ中国の文化の醍醐味を味わえさせるのでしょうか。

遠くに見える巨大な山のふもとに「鯉の川上り」と言われる景色があります。これもはやり縁起のいい鯉を取り上げて中国の「想像文化」にマッチしたようです。


遠くに見える山は「九馬画山」と言われ、岩石から中国の「想像文化」による醍醐味が味わえることができます



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作者:(董文利 「ふれあい中国」)

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