瀘沽湖

瀘沽湖は麗江市の中心から270㎞離れており、雲南省と四川省の省境をまたぎ断層の地殻活動に伴う地表陥没で形成された高山湖です。海抜2690mの高山地帯に50?に及ぶ湖面には5つの島と3つの半島が浮かび、平均水深は45m、最大水深は93mとなっています。瀘沽湖の水は青く透き通り、10mほど先まではっきり見ることができる透明度を誇っています。

瀘沽湖は「高原の明珠」と称され、曲がりくねった湖の輪郭は馬の蹄の形をしており周囲は高い山々に囲まれています。晴れた日には空気が澄み切って、湖の水と青空が紺碧の青を作り出し、湖面には壮大な山々が映し出されます。また、静かに揺らぐ湖面には漁をする摩梭(モソ)族の丸木舟「猪槽船」が行き交い、摩梭族が歌う心地よい歌声が聞こえてきます。この神秘的で心癒される景観を一目見ようと多くの人々がこの地を訪れています。
瀘沽湖周辺は1400年前から麗江ナシ族の支系にあたる摩梭族の人々が移り住み、現在でも約6000人が生活していることから瀘沽湖は摩梭族の「シェナミ(母なる湖)」と称えられます。また摩梭族には今でも母系社会の習慣が残っており、「女人国」「通い婚の里」と言われています。

格姆女神山
格姆女神山は瀘沽湖の北にそびえる標高3754mの山で獅子の形に似ていることから「獅子山」とも言われます。格姆女神山は摩梭族の聖山であり、神と崇められ信仰されています。旧暦7月25日の転山節は摩梭族最大の祭日で、多くの人々が盛装して格姆女神山の麓に集まり盛大な祭りを行い、格姆女神に祈願し日頃の生活の感謝をします。

瀘沽湖の「蓬莱三島」

瀘沽湖にある5つの島の中で、黑瓦吾島、里務比島、里格島は特に美しく仙界の「蓬莱三島」と称えられます。黑瓦吾島は瀘沽湖の中心に位置し、かつて永寧土司が水上行宮を建造した場所で、鬱蒼としげる森林に覆われ渡り鳥の生息地として多数の野鳥が訪れます。里務比島は全長450m、面積約200㎡、瀘沽湖の中に突き出た吐布半島と隔てられ、1634年にチベット寺院が建立され現在の「里務比寺」は1989年に再建されたものです。里格島には現在でも10戸の摩梭族が生活しており、母系社会を色濃く残す土地として「水上女児国」と言われます。この3島までは手漕ぎの丸木船で静かな湖面クルーズを楽しみ、上陸して観光することができます。

摩梭族の通い婚

摩梭族は中国の他の民族では見られない母系家族制と通い婚の社会習慣を守り続けています。摩梭族は母親を中心とする大家族で生活しており、祖母は大家族の家長になり財産は母から娘へと受け継がれていきます。言い伝えとして「男は娶らず、女は嫁がず」と言われているように、「通い婚」の習慣で男女は自分の実家に住み、男性が女性の家に通うことで二人の関係が築かれていきます。また、男性には子供を育てる義務がなく、自分の姉妹の子育てに参加することになっています。

摩梭族の木楞房
摩梭族の木楞房は丸太を積み上げて壁を作った二階建ての木造建物で、屋根の長さは1mで、幅0.17~0.26mの板で覆われています。家屋敷きは四合院と似ており、入口に門楼があり、中庭を囲んで正面は祖母屋、左側は経楼、右側は花楼が配置されています。家長である祖母が住む祖母屋が建物の中心となっており、先祖をまつる祭壇や仏画があり、囲炉裏に鍋をかけて煮炊きをしたり、家族で囲炉裏を囲み食事をしたり、お茶を飲んだり、祖母屋は一家団らんとお客をもてなす重要な場所となっています。経楼はチベットの仏間、花楼では成人女性たちが住み、通い婚の男性を受け入れるために外に通じる個室が作られています。この木楞房はナシ族最古の住宅形式であり、摩梭族の文化習慣を忠実に表現した建築といえます。